会員 随想

随想(佐渡測量(株) 池一義)

佐渡測量株式会社
池一義

 距離の観測がテープの時代、角度の測量がメインであった基準点測量は、ほとんどがいわゆる三角測量で名前そのものであった。しかも計算機はタイガー計算機及びソロバン、そして真数表、対数表を駆使しての作業である。いざ出張ともなると必ず携帯しなくてはならない七つ道具の一つでもあった。
 自分がまだ駆け出しのころ、出張で鉄道の作業に従事した事があった。学生のアルバイト4,5人と線形の杭打ち作業のときのことである。当然ながら複雑な線形と見通しの障害物、今まさに電車が走っている生きた線路との交錯した場所等への杭打ち作業で、直接測量は不可能(当時はほとんどの作業が直接観測)で、トラバース測量にて基準点を設置し、その点からの逆打ち作業がメインであった。ある逆打ちの作業のときの事、1本の杭がどうもおかしな位置にくるので、再度角度と距離にて点検をしてみた結果、やはり位置がおかしいことが解った。勿論トランシットと鋼巻尺を使用しての作業である。「点検したんだがなー」と思いながらも他の作業に切り替えて、その日の作業を終えて旅館に帰る途中、バイトの学生にヘボ測量士と言われたのには返す言葉はなかった、間違いは間違いである。悔しかったが帰って直ぐおかしかった測点の再点検を行い、間違っている原因が解って正しい結果に修正した。
 実はこの作業には自分としては並々ならぬ努力があった。まず現場作業でバイト4,5人を遊ばせてはいけないと言う事と、1日でも早く現地作業を終わらせて旅館代等を節約し会社に貢献しなければならない使命感で、次の日の作業は前日までに内業を終了させなければならなかったのである。ご存知の方も多かろうと思いますが、ソロバンはパチパチ計算機はガラガラチーンと旅館の襖一つ隔てた関係のない方々は五月蝿かったらしく、ご多分に漏れず旅館からお小言を頂戴したのである。そこでやるせなく襖から出来るだけ遠くでしかも布団をかぶりその中へ蛍光スタンドを持ち込んでの作業であった。そして次の日何食わぬ顔をして(本当は眠くてたまらないのと内業の現実の愚痴を言いたかったが、先輩達に言い訳せず知らんふりが美徳と言うものだと言われ)作業を行った思い出が今も鮮明に脳裏に焼きついている。ちなみに計算機では真数など出力できるすべもなく、掛算や割り算などは表にて対数に変換し、加減算にて計算、あるいはタイガー計算機を回していたのである。
 それから数十年コンピュータの発達とともに光波測距儀、トータルーステーション、GPS、電子基準点、RTK観測、VRS観測、高画質カメラ、GIS、3Dスキャン等などまさに日進月歩で目に余るスピードです。現在のTSなどについては自動追尾、自動フォーカス、設置してボタンを押すだけで勝手に器械が観測記録まで行ってくれる、当時としては考えられなかった時代がきている。これらの機器や技術を駆使し取り残されてはいけないと日々努力し、顧客の要望にも満足出来うる様精進して行こうと心がけ、当社においても最新の器械3Dスキャン等を導入して、今後の新技術を利用した測量作業に遅れをとるまいと、頑張っているところである。
 最後になりましたが、測量を通じて誠実さをモットーに、最新技術を客先に提供し、地域に貢献していける会社であり続けたいと願っています。

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