会員 随想

還暦を過ぎて(サープラックス㈱ 渋谷良一)

サープラックス株式会社
渋谷良一

 還暦。辞書で調べたら「満60歳で生まれた年の干支に還える。」と書いてあった。大方の働く人にとっては人生の大きな転換期である定年を迎える。昨年、私は60歳となった。今にも消えてなくなりそうな泡沫企業ながら、会社の代表者である私に定年はない。今日も以前と同じように毎日仕事をする。しかし、還暦前の自分とどこか違う自分を発見して戸惑うのだ。
 一昨日の日曜日は海に潜って牡蠣を獲った。その前の週の休日は黒部の水平歩道を歩いた。更にその前の前の休みにはゴルフをした。時々、いや、しばしば酒も飲む。
 毎日、ただただ惰性のように同じ生活をしているのだが、50代の項とどこか違う自分を感じるのだ。一言でいえば無理をしなくなったということか。いや、出来なくなったのかもしれない。情けないことだが無理の出来なくなりつつある自分を発見する。
 この頃では、プラス1.5から3.0までの老眼鏡をいたるところにおいて使っている。それでも長時問すると目が疲れてきてかけていたメガネを放り出す。
 仕事の第一線から退く日もそう遠くない時期に来ることだろう。その日の来るのを心待ちしている自分を心の隅っこに発見して驚いたのはいつだったろうか?
 戦後数年を経ずして小学校へ入った頃から今日の日に至るまで、激しい時代を生きてきたという実感はある。高度成長期、バブル期を経て大不況の今日に至るまで、荒波にもまれつづけた毎日だった。いや、今日もまだ荒波にもまれつづけている。バブル崩壊という名の暴風だ。まわりを見廻すと転覆する船が続出し、私の小船も既に浸水し始めている。この暴風はいつ終わるのか見当もつかない。このボロ舟がいつまでもつのか心もとない限りである。今日もまた、益々水漏れの激しくなった舟の水をかき出しながら仕事をつづける。
 限りなく愚痴に近い文章になったが還暦を迎えた今の偽りなき心境である。

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